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やぎと少年

やぎと少年
やぎと少年
アイザック・B・シンガー/作 M・センダック/絵 工藤幸雄/訳  岩波書店   

 近頃ではインターネットの普及もあって、読者の声が良書の復刊に着実に反映しているように思います。児童書とて例外ではありません。先月も岩波書店から多数の優れた児童書が復刊されました。

 その中からきょうは、ぜひこの機会にご家庭の蔵書に加えていただきたい一冊「やぎと少年」の紹介です。
 この本の著者アイザック・B・シンガーさんは一九〇四年ポーランドに生まれたユダヤ人で、第二次世界大戦前にアメリカに渡り、その後一九七八年にノーベル文学賞を受賞しました。彼は東ヨーロッパのユダヤ人が共通語として使用していたイディシ語で物語を書く異色の作家であり、「イディシ語の作家としてノーベル賞を受ける最後の作家」といわれました。第二次世界大戦を経て、東ヨーロッパでは多くのユダヤ人が犠牲となり、イディシ語そのものが滅びようとしている言語だからです。

  わたくしは〈おとなになる機会を持てなかったおおぜいの子どもたち〉にこの本を捧
 げます。あの子たちが、大きくなれなかったのは、ばかけた戦争、ざんこくな迫害が、
 町まちを荒らして、罪のない家庭をめちゃくちゃにしたせいでした。みなさん自身が、
 お父さん、お母さんになったとき、自分の子どもばかりではなしに、世界じゅうの良い
 子どもたちみんなを、かわいがってほしい、わたくしは、そう願っています。
                                 −「やぎと少年」まえがきより

 まるで死んでいった人たちに向けて物語を綴るように多くの作品をイディシ語で書き続けた作家の思いは、この子どもに向けて書かれた「やぎと少年」でも同様です。いや、「文学が力を失い、物語を話してきかせることが忘れられた芸となりつつある現代では、子どもたちこそ最良の読者なのです」というシンガーさんは、自分の中に思い出としてあって今はこの世から失われてしまったワルシャワの同胞の姿を長くとどめるためにあえて子どもを読者に選んで書いたのでしょう。
 同じくワルシャワからアメリカに渡った両親をもつモーリス・センダックさんの絵とともに、この「やぎと少年」はそれこそ文学の「世界遺産」として長く読み継がれていってほしい本だと思います。

 本書には作者が幼い頃に母や祖母から聞いた昔話をもとにした七編の物語が収められています。その多くにはシュレミールと呼ばれるまぬけで滑稽な人たちが登場しますが、その思わず笑いを誘う話から読者はきっと大切なことを受け取ることになるでしょう。
 そして、やぎと少年の心の交流を描いた表題作は美しい珠玉の作品です。このすばらしい物語が多くの子どもたちに読まれることを願ってやみません。

海 五郎 * 読み物 * 21:29 * comments(2) * trackbacks(0)

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コメント

ようやく、入手して読み始めましたよ。海五郎さんのレビューを読んで、ことり文庫さんで注文して。

ここしばらく寝る前の本はずっと西遊記だったので、久しぶりの静かな本タイム。前書きから読みはじめました。静かで滑稽な物語、テッチはどう聞いたのかな。物語に触れながら、生きているということを、愛おしく思ってくれたらいいな、と思います。
Comment by なつめ @ 2007/07/28 11:13 PM
なつめさん、こんにちは。
こういう本は、子どもの年齢で受け取り方が違うかもしれませんね。
テッチ君が成長していく過程で、いずれまたこの本を手にすることがあれば、今とはまた違う印象を持つのでしょう。そんなことを想像すると楽しいですね。
テッチ君にとって楽しい夏休みとなりますように。
Comment by 海五郎 @ 2007/07/29 3:50 PM
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