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ルリユールおじさん

ルリユールおじさん
ルリユールおじさん
いせひでこ/作  理論社   

 絵本という表現形態は、空間であったり、時間であったりを読者に伝えるときに、時として優れた力を発揮することがあります。それはそれぞれの見開きに割り当てられた絵の構成であったり、あるいはページをめくるという読者の行為によって生まれます。

 この「ルリユールおじさん」という絵本の空間と時間の表現力には圧倒されました。ページを繰りながら、胸のときめきを押さえることができません。そこからはパリの路地裏の日本とは違う光の様子や、そこに漂うほのかな匂いのようなものまで伝わってきます。また、ゆっくりとパリの街に流れる一日の時間を、さらには最後のページを繰るときには少女ソフィーの半生分の時間を感じることができるのです。

 パリの街に朝がきた。
 その朝はとくべつな一日のはじまりだった。


 これは最初の見開きに出てくる文章ですが、この見開きは左右のページがひとつながりで一枚の絵になっています。その左側に配置されたアパートのベランダには小さく少女の姿が、そして右側に描かれたアパートのベランダには初老の男性が描かれています。
 そこから先しばらくは、左右のページがそれぞれ独立した絵になるのですが、そこには別々に少女と初老の男性の同じ時間の断面が描かれているのです。
 さて、お話は少女の持っている植物図鑑がバラバラになってしまい、それを直してもらおうとした少女がやがてその初老の男性と出会うことになるのですが、二人が同じ絵の中に描かれるのは全体の三分の一ほどページが進んでからのことです。
 この男性こそ「ルリユールおじさん」なのですが、ルリユールというのはその人の名前ではなく職業であることも後になってわかります。
 説明はもうこのくらいにしておきましょう。どうぞ実際にこの絵本を手にとって、少女ソフィーと同じ空間を感じ、ソフィーの喜びを一緒に味わってください。

 この絵本はけっして小さい子ども向きのものではないかもしれません。しかし、こんな絵本が家の書棚にあって、ある時、それを手にした子どもが思わずこの世界に引き込まれていく。そんな出会いが実現すれば、とてもすてきだと思います。それが五歳であっても一〇歳であっても、あるいは成人してからであっても、その時こそこの絵本に出会うにふさわしい時期なのではないでしょうか。

※文中の太字部分は「ルリユールおじさん」より引用
海 五郎 * 日本の絵本 * 02:58 * comments(2) * trackbacks(2)

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コメント

海五郎さん、こんにちは。
この本をはじめ見たときに、翻訳本だとばかり思っていました。
文章だけでは伝わらないものが、
絵の中からたくさんあふれてきますね。
おじさんの仕事に対する思いが、とても沁みます。
自分は何を生業とするか、そんなことを真剣に考える時期に、
この本を開けば何か見えてくると思います。
Comment by しんばる @ 2007/04/17 8:23 AM
しんばるさん、こんばんは。
ルリユールおじさんの仕事に対する思いが、ソフィーを植物学の研究者に導く。
その表面からは見えない人の子どもに対する影響力のようなものを、とても旨く描いた絵本ですね。
こんな日常の中のちょっとした出来事が、その子にとってはとても特別な意味をもつ出来事になって、その子の将来まで変えてしまう。
ぼく自身が育った時代は、意外とそういう事実って多かったよう思います。
でも、いまの子どもは学校や塾の先生以外のおとなとふれあう機会が少ないかもしれませんね。
この絵本にはいまの日本が失いかけているものが、たくさん詰まっているのではないでしょうか。
Comment by 海五郎 @ 2007/04/18 2:59 AM
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ルリユール

ルリユールおじさんという絵本が人気のようです。ルリユール(RELIEUR)とは、本の修理をする職人さんのことだそうで、ルリユールおじさんという絵本に登場するソフィーという少女が自分の持っている植物図鑑がこわれてしまい、ルリユールおじさんに治してもらう
From キーワード流行ブログ @ 2007/09/30 10:08 AM

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From - @ 2009/12/27 2:14 AM
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